SDGs、CSV、CSR、ESG、それぞれの違いは?企業が近年注力する理由

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近年、注目が集まっているSDGs。「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」を指し、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会などに関する国際的な目標のことを言います。SDGsに積極的な取り組みを見せている企業も多く、ビジネスや経済の分野でも注目が集まるキーワードです。

しかし、企業と社会貢献の関係ではCSVやCSRなどのキーワードも知られています。果たして、それぞれはどのように関係しており、ポイントはどこにあるのでしょうか。

SDGs、CSV、CSRとは何か

まずSDGsは、前述したように人権や環境、開発などに関する国際的な目標です。社会貢献の文脈で理解されることもありますが、すべての国の政府や企業、個人などが共通して達成を目指していく目標です。

一方でCSVは、Creating Shared Valueの略称で、「共有価値の創造」を意味しています。CSVは、「企業の社会的責任」と訳されるCSR(=Corporate Social Responsibility)としばしば混同されますが、両者は別物です。前者が本業を通じて、社会課題の解決を実現していくものだとすれば、後者は、地域やステークホルダー、環境に対して企業がその役割を果たしていくことを指します。マーク・クレーマーは、「CSRは責任の問題であり、CSVは価値の創造である」と述べています。(※1)

その上で、SDGsを達成していく上では、企業がCSRやCSVのようなアプローチを用いていくことが重要だとされています。

国連によれば、「企業はまず責任を持って自らのビジネスを行い、その上でビジネスにおけるイノベーションととコラボレーションを通じて、社会的課題を解決する機会を追求すること」が重要だとされています。(※2)すなわち、企業が地域やステークホルダー、環境に対して責任を持って自らのビジネスをおこなっていくことはCSRとして位置づけられ、本業を通じて社会問題を解決する機会を追求することはCSVだと言えるでしょう。

SDGsの達成には、政府や企業、NPO・NGOなど様々なセクターの協働が欠かせませんが、その中でも企業はCSVとCSRの考え方を通じて、貢献していくことが求められています。

(※1)https://www.fsg.org/blog/csr-vs-csv-what%E2%80%99s-difference

(※2)https://www.unglobalcompact.org/sdgs/about

SDGsやCSVに注目が集まる背景

では、なぜSDGsやCSVに注目が集まっているのでしょうか。企業がSDGsやCSVに取り組む理由としては、消費者や市場からの好感度や戦略上のメリットが挙げられることがあります。

しかしながら、それは十分な説明とは言えません。なぜなら、SDGsはわたしたちの社会の重要な一員である企業にとって達成すべき目標であり、それ自体が意味を持っているからです。何か利益を得るためにSDGsに取り組むのではなく、SDGsに取り組むことそのものが目的だと言えるでしょう。

それは、CSVという考え方にも現れています。従来CSRについては、資本や人的リソースなどの余力を持つ企業が、社会貢献的なブランド・メッセージを打ち出すためにおこなうものという認識が強かった側面があります。しかし徐々に、企業には地域社会や環境、サプライチェーン、従業員などのステークホルダーへの責任を果たす必要があり、それがCSRであるという認識が強まっていきました。

その結果として、本業を通じて社会課題を解決するCSVへの意識が高まってきました。いまやCSVは社会貢献のブランディングなどではなく、企業の戦略や市場選定そのものにも重大な影響を与えていると言えるでしょう。その中で、国際社会が共通の社会課題をSDGsとして掲げているからこそ、企業にとってもSDGsが無視できないものだと言えるのです。

SDGsに関連するESGとは

またSDGsとあわせて注目を集めている概念に、ESGがあります。企業がESGに注目しながら事業活動を進めることで、結果としてSDGsの目標達成に繋がっていくため、重要視されています。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取った略語です。

ESGの3つの観点を、以下のように整理してみましょう。

環境(Environment)
二酸化酸素の排出量の削減、再生可能エネルギーの使用、生物多様性の確保、水質汚染の改善など

社会(Social)
ダイバーシティ、ワークライフバランス、ジェンダーの平等、サプライチェーン(消費者に商品が届くまでの一連の流れ)における人権問題への配慮、個人情報の保護・管理など

ガバナンス(Governance)
リスク管理のための情報開示や法令順守、取締役会の多様性、資本効率に対する高い意識など

ESGが生まれた背景として、社会問題が顕在している中、短期的な利益追求のために不祥事を起こす企業が多かったという問題がありました。その問題を防ぐために、国連は2006年に責任投資原則(PRI)を提示し、投資家に対してESG重視の投資をおこなうことを提唱しました。またESGを考慮して投資することを「ESG投資」といいます。

ESGを意識した経営をおこなうメリットとして、ブランディングを構築でき、企業イメージの向上に繋がることがあげられます。その結果、投資家からも投資先として選ばれやすくなり、資金調達も容易になります。

企業が社会問題の解決に貢献できる取り組みを事業を通しておこなうことで、これら以外にも中長期的なメリットに繋がる可能性があります。そのため企業が長期的成長を目指す上での重要な指標として、現状多くの企業に注目されています。

CSV的なアプローチでSDGsに取り組んでいる企業

では実際に、CSV的なアプローチでSDGsに取り組んでいる企業を見ていきましょう。SDGsに関連した世界的な企業評価である「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」に、近年ランクインした日本企業をいくつか見てみます。

まずエーザイは、医薬品の提供のみにとどまらず、医薬品アクセス向上への取り組みや地域医療に対するソリューションの提供など、様々な活動を行うことで、SDGsの枠組みに則った本業を通じた社会課題の解決(CSV)をおこなっています。

たとえば、目標3の「すべての人に福祉と健康を」に紐付き、革新的な医薬品の創出および医薬品の提供にとどまらないソリューションの提供を目指しています。また目標1の「貧困をなくそう」と紐付いて、開発途上国・新興国への医薬品アクセス向上への取り組みを通じて、健康福祉の向上、中間所得層の拡大による経済成長への貢献をめざすことも挙げられています。

これらはエーザイの中核事業であるばかりか、開発途上国・新興国という新たなマーケットでの事業拡大とも関係しているため、まさにCSV的なアプローチであると言えます。

また積水化学工業も、グループビジョンとして「地球環境の向上」および「世界のひとびとのくらしの向上」を掲げており、SDGsで提唱されている課題解決に対して、「本業である事業を通じて貢献していく」と明記しています。

コニカミノルタも、「新しい価値の創造」を経営理念に掲げ、新しい価値を「事業を通し経済的価値を生み出すと同時に、さまざまな社会課題の解決に寄与する社会的価値を創出すること」と定義しています。事業選定についても、SDGsから数十年先のあるべき未来像を描き逆算思考で検討していくなど、SDGsにもとづくCSV的なアプローチをおこなっています。

メンバーズの取り組み

わたしたちメンバーズも、経営や事業においてCSVやSDGsへの取り組みを積極的におこなっています。

具体的には、メンバーズとお取引いただいているお客さまのCSVや社会課題解決型コンテンツの制作を支援させていただき、CSVの考え方を世の中に広めている他、SDGsの17の目標のうち、特に目標4・5・8・12の4つに注力しています。

またVISION2030では、「日本中のクリエイターの力で、気候変動・人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする」ことを掲げて、目標13「気候変動に具体的な対策を」へのコミットメントを強めています。

▼VISION2030を詳しく知る
https://www.members.co.jp/ir/pdf/20200508_04.pdf

世界的なSDGsやCSVへの関心の高まりから、企業にとってはますます、それらを意識した戦略や経営が求められています。こうした流れは、社会貢献への一時的な関心ではなく、価値観や意識のパラダイムシフトを背景として、企業にとって不可逆な流れだと言えるでしょう。