「DX現場支援は、心豊かな社会を創るための手段」――メンバーズが戦略や効率化の先に見据える、デジタル変革の本質とクリエイターの使命

キャリア

現在、私たちの生活のあらゆる場面にデジタルが浸透しています。そして人口減少や気候変動といった深刻な社会課題を解決する手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)への期待はかつてないほど高まっています。では、単なるデジタル化とDXはどう違うのでしょうか。そして、メンバーズはなぜデジタル変革を真に成功させる答えが、「現場支援」にあると見出しているのでしょうか。メンバーズが「DX現場支援」にこだわる理由と、デジタルクリエイターが歩むべき未来について、役員の塚本さんにお話を伺いました。

塚本洋
専務執⾏役員 事業戦略本部 人材育成領域を担当(取材時)
2004年に株式会社メンバーズに⼊社。国内⼤⼿企業のWeb戦略策定、サイト構築、運⽤をプロデューサーとして多数⽀援するとともに、中期経営計画の策定、SNS事業の新規⽴ち上げを⾏い、メンバーズのV字回復の実現に貢献した。その後、アジャイル開発・UXデザイン事業の新規⽴ち上げや数々の新規事業開発を⾏い、国内⼤⼿企業のDX⽀援を推進してきた。2024年4⽉より現職 。

一般的に「DX」という言葉は広い意味で使われますが、いわゆる「デジタル化」とは何が違うんでしょうか?

単に紙のパンフレットをウェブサイトにするだけならば、それは既存のやり方をデジタルに置き換えただけの「デジタル化」に過ぎません。「DX」の本質は、デジタルがあることを前提にしてビジネスモデルそのものをゼロから作り変える変革なんです。 

たとえば映画業界を例に出すと、オンラインでチケットが買えるようになるのはデジタル化です。一方で映画館へ行くという体験そのものを動画配信サービスへ業態変更して、消費者の視聴習慣ごと変えてしまうのがDXです。ほかにも、自動車を製造して販売するモデルから、デジタルを活用した移動のシェアリングサービスへと転換する動きなんかもDXですね。

このようにデジタル中心に顧客体験や収益構造を再定義すること。つまり世の中のあらゆる企業がデジタル企業に生まれ変わることそのものがDXなんです。単なるIT活用ではなく、会社のサービス、カルチャーや社員のスキルまで変えていくことがDXの本質です。

また、今後はAIも単なる「道具」としての活用に留まらず、ビジネスや社会のあり方を根底から作り変える変革の核となっていきます。AIがあらゆる変革の前提となる「AX(AIトランスフォーメーション)」という、より本質的なフェーズへと突入していくのです。

世間一般で言われるDXと、メンバーズが目指しているDXとの決定的な違いはどこにあるのでしょうか。

一般的な、たとえば経済産業省の定義などでは、DXの最終的なゴールは「競争上の優位を確立すること」とされています。極端に言ってしまうと、効率化や売上アップのための金儲けの手段という側面が強いんですよね。 

もちろん利益は大事ですが、私たちにとってのDXは心豊かな社会を実現するための手段なんです。デジタルを使って人を幸せにすることや、社会をより良くすること自体を目的としています。クライアントのビジネスを成功させたその先に、いかに社会課題を解決して豊かな未来を創っていけるか。そこまでをセットで見据えているのが、他社との大きな違いだと思います。

「社会課題の解決」が「ビジネスの成長」に直結するというのは、なかなかイメージしにくい部分もあります。

社会課題というのは単なるボランティアの対象ではなく、新しい価値を生み出すイノベーションの源泉なんです。

私たちがそう確信している背景には、東日本大震災のときに仙台オフィスを開設した原体験があります。寄付やボランティアも考えましたが、私たちには本業を通じて復興を支援したいという想いがありました。当時はリモートで仕事を頼むことへの反対も見られました。ですが、被災した方々を雇用して運用モデルを確立した結果、現地雇用を生むだけでなく会社としても大きな成長を遂げることができたんです。今では全国各地に拠点があり、仲間が働いています。

社会課題に真摯に向き合うことで、これまでにないビジネスの種が見つかって、結果として利益もついてくる。そして消費者の支持も得られる。まさにメンバーズ、お客さま、ユーザーの「三方よし」で、こんなにいい戦略はありません。私たちはこれを「CSV(共通価値の創造)経営」として実践しています。 

具体的に、デジタルの力でどのように社会課題を解決していくイメージですか?

たとえば深刻な人口減少という課題に対して。これにはデジタルを活用して一人当たりの労働生産性を劇的に上げるアプローチが有効です。飲食店の配膳ロボット導入や建設現場のデジタル管理などで、少ない人数でも現場を回せる仕組みを作る。そうすれば働く人の負担を減らしつつ給料を上げて、幸福度を高めることができます。

メンバーズのクライアントは日本を代表する大手企業ばかりです。彼らのサービスが私たちの提案で環境に配慮したものになったり、使いやすくなったりするとどうなるか。瞬く間に数千万人の生活にポジティブな影響を与えられます。この圧倒的なレバレッジこそが、大企業と組んでDXを推進する大きな意義なんです。

他社もDX支援を掲げる中で、メンバーズの「DX現場支援」ならではの強みを教えてください。

今のDXは「やってみないと分からない」ことばかりで複雑です。どんなに素晴らしく見える戦略を立てても、実装して実行できなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。

日本のDXの現場では、コンサルに戦略を立ててもらって外部のベンダーにシステムを組んでもらう丸投げ型がスタンダードになっています。ですが、それだとお客さまの中にノウハウが溜まりません。そうではなく、企業に入り込んで戦略の実行を一緒に伴走して行なっていくことが、メンバーズの強みです。

戦略(レシピ)だけを売るコンサルや、指示通りにシステムを組む(調理する)SIerへの丸投げでは、変化の激しい現代のDXに立ち向かうのは難しいでしょう。実際に現場(厨房)に入る。そして味見をしながら「食材の切り方を変えよう」「この調味料を足してみよう」と試行錯誤し、実装(デリバリー)まで責任を持つ。あたかもクライアント企業の一員のような「あたかも社員®」として動く。この泥臭い「実行」のプロセスにこそ私たちの価値があるのです。ユーザーに価値が届く「最後の1マイル」を繋ぎ込むことに、私たちは何よりこだわっています。

メンバーズは「レシピを書く人」や「言われた通りに調理する人」に留まりません。最高に美味しい料理をお客さまと一緒に作り上げる「実行者(エグゼキューター)」でありたいと考えています。

そして、この実行力を支える根源となっているのが、一人ひとりが備えている「実装までを完遂できる高く多様な専門性」です。メンバーズには多種多様な領域のスペシャリストが揃い、その個々の高い専門性を持って顧客の現場へ深く入り込む。このプロフェッショナルとしての個の力が、私たちのスタンスを支える重要な土台となっています。

※あたかも社員®は当社の登録商標です。あたかも社員(登録商標第6923667号)

「あたかも社員®」というスタンスには、どのようなこだわりがあるのでしょうか。

DXを成功させるには、お客さまと私たちがワンチームになってスピード感を持って実行することが欠かせません 。だから私たちは外部の業者としてではなく、内部の当事者、つまり「あたかも社員®」として顧客組織に入り込むんです。 

単にお客さまと仲良くなるのが目的ではありません。お客さまが持っていない高い専門性を持ち込みつつ、同じビジネス解像度で課題に向き合い、対等な関係で伴走することを大切にしています。

多くのプロフェッショナルは「自分の技術を磨くこと」を優先しがちです。ですがメンバーズでは、エンジニアやデータサイエンティストが技術だけを見るのではない。お客さまのビジネスを成功させるために自分の専門性をどう活かすかを考え抜く姿勢を持っています。ここが深いビジネス理解と信頼関係に繋がっていますね。

変化の激しいデジタル・IT業界において、若手クリエイターにはどんな成長環境を用意していますか?

私たちは世界でもトップクラスのデジタル競争力を持ち、「幸せな国」として知られるデンマークの社会モデルをベンチマークしています。その核心は、リスキリングによって円滑な労働移動を促す「柔軟性」と、手厚い社会保障によって生活の不安なく次のステップへ踏み出せる「安全性」を両立させた「フレキシキュリティ」という考え方です。これを元に、生涯最前線で活躍し続けられる仕組みを整えています。

たとえば高度なスキルを無償で学べる社内教育制度のSINCA(※)。多様な案件に挑戦できる社内公募やスカウト制度などがそうです。 デジタル領域では今日身につけたスキルが3年後には陳腐化しているかもしれません。だからこそ、特定の技術に固執するのではなくて、変化を楽しみながら常に新しい領域に越境し続けることが重要です。市場価値を高め続けるための投資を会社は惜しみません。そして正社員としての長期雇用という安心感の中で挑戦できる環境を提供しています。

※SINCA:Skill Innovation and Career Advanceの略。その名の通り「スキル革新とキャリアの向上」を指す、メンバーズ社内の無償研修プログラム。PMO、マーケDX、UIUXなど多種多様な講座を揃えている。プレスリリースはこちら

メンバーズが「挑戦」を何より重んじているのは、なぜでしょうか。

挑戦して成功することに価値があるのは当然ですが、私たちは挑戦して失敗することにも価値があると考えています。全力を尽くした結果の失敗は、たとえ利益ロスが発生したとしても、成長のための尊いプロセスとして許容されます。もちろん挑戦して成果を出すことが望ましいですが、私たちが最も避けたいのは失敗そのものではなく、「守り」の姿勢に入って挑戦を避けることです。そこには成長がありません。技術が陳腐化しやすい今の現場において、挑戦しないことはリスクであるとさえ言えます。

正解がないDXの世界では、仮説を持って動いてみてその結果から学ぶサイクルが成長への最短距離です。そんな優しくて厳しいカルチャーこそが、変化の激しい業界を生き抜く武器になると信じています。

変化が嫌なら100年変わらない技術を継承するような業界に行けばいい。デジタル・IT業界を選ぶところから挑戦は始まっています。
 

最後に、DXの領域を志す学生のみなさんへメッセージをお願いします。

仕事のキャリアは100メートル走ではなくて、40年間走り続ける長い旅のようなものです。

目先のテクニカルスキルも確かに大切です。ですが、それ以上にどうすればモチベーションを持って学び続けられるかという自分なりの姿勢を身につけてほしいですね。スキルは入社後でも身につけることができますし、会社もそのための投資は惜しみません。それより、学生時代には本を読んだり旅をして、普段出会わないような多様な価値観に触れてみるのはいかがでしょう。そうすることで自分の人間力や視野が広がります。そうして得られた豊かな視野が、将来のあなたの「走り」を支える土台になります。

AIが進化するこれからの時代、最後に求められるのは「誰のためにその技術を使いたいか」という利他的な視点。そして正解がない中で仮説を持って動ける行動力です。変化をポジティブに捉えて楽しめる皆さんと、社会にインパクトを与えられる日を楽しみにしています。