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2018年に経済産業省によって「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」(※) が公開され、DXというキーワードに大きな注目が集まりました。

しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)への注目とは裏腹に、その定義や実例などが曖昧なまま、言葉がひとり歩きしている側面も。そこで今回は、DXとは何であり、具体的にどのような取り組みがなされているのかを見ていきます。

※:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

DXとは何か

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)のことを指し、もともとは我々の暮らしの至る所にデジタル技術が浸透してくることで、変化が生まれる状態を表しています。

しかし近年では、企業がデジタル化に対応して、自社の業務プロセスや事業モデルを変革することの意味合いで使われることが増え、例えば経済産業省は、以下のように定義しています。(※1)

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

ここで記されているように、DXとは単にデジタル・ツールを導入したり、オンラインでマーケティングをすることに限りません。

たとえばコンサルティング企業マッキンゼー(McKinsey)によれば、DXについての「主な課題は技術的なものではなく、経営者のコミットメントや理解度、企業の文化やデジタル人材の不足といった、人・組織にまつわる要因が上位」(※2) だとされています。すなわち、企業がDXを実現するためには、便利なツールの導入やデジタル広告の強化よりも前に、組織や企業文化、人材などを変革していく必要があります。

なぜなら、DXとは一部の製品やサービスをデジタル化することではないからです。業務プロセスや事業モデルそのものの変革が目的だと考えれば、組織自体がデジタルに深い理解を持っており、そのための人材が揃っていることが大前提となります。

※1:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

※2:デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ
https://www.mckinsey.com/jp/~/media/McKinsey/Locations/Asia/Japan/Our%20Work/Digital/Accelerating_digital_transformation_under_covid19-an_urgent_message_to_leaders_in_Japan-jp.pdf

なぜDXが注目を集めているのか

しかしながら、インターネットは2000年前後から本格的に登場しており、業務のデジタル化も以前から指摘されていました。では、なぜいまDXがこれほど注目を集めているのでしょうか。大きく5つの理由が考えられます。

2025年の崖
DXが注目されたきっかけの1つに、2018年9月に経済産業省から発表されたレポート(※) があります。そこでは、既存システムが事業部門ごとに分断・複雑化されており、その結果ブラックボックス化していること、その結果としてDXが実現できず、維持管理費の高騰、セキュリティリスクの高まりなどが指摘されています。

すなわちレガシー化した既存システムによって、企業や自治体などに大きな損害が生じることが、DXの必要性へと繋がっていると言えます。企業のデジタル化は一定度まで進んだものの、結果として部分最適化が繰り返された重厚長大なシステムができ上がり、その負債が見逃せないものとなりました。

この問題が表面化する時期が2025年前後であり、その結果として「2025年の崖」という問題が生まれてきたのです。

※:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

既存領域の成長
また企業が既存領域の成長を目指す上で、DXが欠かせない要素であることも理由です。

前述したマッキンゼーのレポートでは「デジタルで生み出される価値の7割は既存事業の変革により生み出され、残りの3割が新規のディスラプティブなビジネス創造から生まれることが分かっている」とした上で、「デジタル技術を活用した新規事業の立ち上げに目が行きがちだが、本来は、デジタル技術の活用による価値の多くは、既存事業の変革にある」と述べられています。

すなわち、世界各国の企業がDXをおこなっている中で、日本企業が厳しい競争に勝ち抜いていくためには、既存事業をデジタル化することで、再成長させる必要があります。

消費者の変化
消費者の変化も、DXが要請される背景にあります。

たとえばNTTコミュニケーションは「スマートフォンやWebサービスの普及により、顧客の使うコミュニケーション手段は多様化しており、メールや電話に加えて、SNSやチャットなどの利用比率が増え続けています。いかにお客さまと最適なチャネルかつ最適なタイミングでコミュニケーションをとるかが重要になってきます」(※1)と述べて、DXでは「顧客視点」が重要だと指摘しています。

同様に、コンサルティング企業アクセンチュア(Accenture)は「先進的な企業は、デジタルにしっかりと軸足を置いた、顧客体験の再定義を始めています」とした上で、「多くの企業にとって、デジタル化への取り組みは将来の存続要件」(※2)だと述べて、DXと顧客体験が不可分の関係にあると述べます。

いまや企業と生活者のコミュニケーションは、WebサイトやLINEやInstagram、TikTokなどのSNSでおこなわれていますが、その体験が企業や商品イメージを決定づけるようになりました。これは単純にマーケティングの問題ではなく、企業のブランドやアイデンティティの問題と不可分となっており、デジタル化した消費者のライフスタイルに応えるには、企業のDXも不可欠ということです。

※1:DXによる顧客体験(CX)の進化 コミュニケーションのデジタル化の方法[
https://www.ntt.com/bizon/dx/com-evolution.html

※2:デジタル・トランスフォーメーション~顧客中心のデジタル変革
https://www.accenture.com/t00010101t000000__w__/jp-ja/_acnmedia/accenture/conversion-assets/dotcom/documents/local/ja-jp/pdf_2/accenture-insight-digital-marketing-transformation-reimagine-outside.pdf

社会構造の変化
冒頭であげた経産省のレポートでは、「2025年の崖」が指摘されていますが、この年は「2025年問題」の年とも言われています。これは、1947-49年の第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が、後期高齢者(75歳)になる年です。

その結果、医療や介護など社会保障費の急増が懸念され「超高齢社会」がやってくることで、IT人材をはじめとする労働人口が不足すると言われます。労働人口の減少により、社会が自動化・効率化を余儀なくされることも、DXが求められる背景です。

パンデミック
新型コロナウイルスもまた、DXを大きく加速させました。テレワークやハンコの廃止といった表層的な変化ではなく、人々の働き方や産業構造が大きく変化したと言われています。

ECやフード・デリバリーなどの企業が急激に成長し、仕事だけでなく教育やコミュニケーションなどが次々とオンラインに置き換わりました。新たなビジネス機会やワークフローの変化などが突然押し寄せたことで、企業は必然的にDXを求められるようになったのです。

DXの具体的な事例(国内企業)

では、具体的にどのような企業がDXに成功しているのでしょうか。前述したように、DXとは必ずしも製品やビジネスモデルの変化に限らず、組織・業務プロセス・企業文化の変革を表します。そのため、表からは見えづらい変化もありますが、国内企業・国外企業それぞれのケースを見ていきましょう。

トヨタ自動車
日本を代表するトヨタ自動車は、MaaS(Mobility as a Service)の到来に向けてビジネスモデルの大胆な変革を目指しています。(※1) しかし新たなテクノロジーによって変化しているのは、ビジネスモデルやモビリティの概念にとどまりません。

たとえば、販売会社の営業支援システムについて、従来の自社サーバーにソフトウェアを搭載するオンプレミス型から、柔軟性を持ったクラウド型に切り替えました。(※2)これにより、販売店の裁量範囲を維持しながら、間接業務のデジタル化やデジタルな顧客理解をおこなうという、まさに営業プロセスのDXを実現しています。(※3)

※1:モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジに向けて
https://global.toyota/jp/company/messages-from-executives/details/

※2:トヨタが販売会社の営業活動支援システムを刷新!顧客アプローチの迅速化を実現したデータ連携基盤に迫る
https://japan.zdnet.com/extra/terrasky_toyota_201906/35139036/

※3:トヨタ販売店営業支援システム刷新プロジェクトの裏側
https://www.salesforce.com/jp/blog/2019/11/trailblazer-story-toyota-dealer.html

京セラ
年100億円以上(※1) を投じて、本社や自社工場の間接部門などの業務のデジタル化を進めているのが、京セラです。「生産性倍増プロジェクト」を掲げて、ロボットの導入やAIによるデータ活用をおこなってきました。
人間の作業を単にロボットに置き換えるのではなく、不良品や機械の不良を検知して製造ラインを「自律化」していくことをコンセプトとして、DXを進めています。(※2)

※1:京セラが年100億円を投じるDX戦略の中身
https://newswitch.jp/p/20581

※2:京セラ×IBM データとAI活用で劇的な生産性向上を目指す、その成功のカギとは
https://www.ibm.com/downloads/cas/MAGWKGPL

農林水産省
DXの波は、官公庁にも押し寄せています。農林水産省は、これまで畜産・酪農家の支援事業において紙の申込書を取りまとめ、Excelに落としていましたが、SaaS型アプリケーションサービスを導入することで、効率化を実現しました。(※)

政府のDXをめぐっては、来年9月に発足するデジタル庁が民間人材を登用するなど、積極的な動きを見せています。民間企業に限らず、政府セクターでもDXは強く推し進められていくことでしょう。

※:農林水産省初のクラウド導入で 業務効率化を図る
https://www.fujitsu.com/jp/services/application-services/enterprise-applications/crm/crmate/case-studies/maff/index.htm

DXの具体的な事例(国外企業)

コカ・コーラ

世界的な飲料メーカーのコカ・コーラも、全社を挙げてDXに取り組んでいる企業の1つです。飲料メーカーのDXといえば、サプライチェーンや生産管理におけるデジタル化、あるいはデジタル・マーケティングへの注力が思い浮かびますが、それだけではありません。

たとえば飲料の在庫管理や予測にデータを活用したり、商品をスキャンすることで特典が得られたり、オンラインまたはモバイルアプリを介して注文やピックアップがおこなわれるなど、多岐にわたる分野でDXが進んでいます。(※)

※:How Digital Technology and Big Data Can Accelerate Coke North America’s Innovation Strategy
https://www.coca-colacompany.com/news/tech-and-big-data-accelerate-innovation-strategy

スターバックス
早い段階からモバイルアプリを導入し、顧客とのコミュニケーションを図っていたという意味で、スターバックスはDXの先駆的な企業として知られています。しかし、彼らのDXはそれだけにとどまりません。

たとえば新規の店舗を出店する場合、人口密度や地域の平均年収、交通パターンなどから店舗の収益性を予測して、意思決定をおこなっています。また店内のメニューの表示を時間帯や天気によって最適化して表示したり、そこから得られたデータを商品開発に活用しています。(※)

※:Starbucks’ secret ingredient: data analytics
https://digital.hbs.edu/platform-digit/submission/starbucks-secret-ingredient-data-analytics/

HSBC
銀行など金融領域でのDXは、さまざまな変化が生じています。ブロックチェーンなど取引履歴の刷新や、生体認証などを通じた堅固なセキュリティーの構築、与信や支払いデータの照合など大規模データの解析、そして不正な取引の検知などです。

世界的なメガバンクであるHSBCも、クラウドベースのシステムを介した国際的な支払いのステータスの追跡や個人・法人問わずスマートな口座管理、債券発行にともなう複雑なプロセスの効率化など、さまざまな業務プロセスにおいてDXを進めています。(※)

※:How technology is transforming corporate banking
https://www.hsbc.com/insight/topics/how-technology-is-transforming-corporate-banking

DXに何が必要となるのか

では、DXにはどのような条件が必要になるのでしょうか。たとえば、経済産業省はDXの取り組みに必要となる条件として、以下のような項目をあげています。(※1)

・ビジョン
・経営トップのコミットメント
・仕組み(マインドセット・企業文化、推進・サポート体制、人材育成・確保)
・事業への落とし込み
・ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築
・ガバナンス・体制

また前述したマッキンゼーのレポートでは、経営トップを巻き込んだDXの着火、事業ドリブンでのインパクトを意識した取り組みの設計、デジタル組織能力の構築、文化の醸成とチェンジマネジメントの4つが挙げられています。

他にも三菱総合研究所は、「顧客提供価値を見直し、『変革対象』とそれに必要な『実現手段』を決定できる『人』がDX成功のカギ」として、デジタル人材の育成が重要だと述べています。(※2)

こうした指摘を見ると、DXをおこなう上で必要となるのは、経営層のコミットメントやDXを実現するための技術、企業文化はもちろんのこと、それらを支えるデジタル人材であることがわかります。

前述した複数の事例を見てもわかるように、DXは多様な領域や業務プロセスにおいて求められています。そのため、単一の手法やプロセスが存在するのではなく、経営層がビジョンを持ち、その企業や状況に適した形で、多様なステークホルダーを巻き込んで進めていくことが、成功への近道だと言えそうです。

※1:「DX 推進指標」とそのガイダンス
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf

※2:DX成功のカギはデジタル人材の育成 第2回:DX推進に求められる「デジタル人材」とは?
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20200528.html

なぜメンバーズがDXに取り組むのか

わたしたちメンバーズも、デジタルトランスフォーメーション推進支援を本格的におこなっています。メンバーズでは、これまでWebサイトを中心としたデジタルマーケティング支援サービスを中心におこな行ってきましたが、コロナ禍などを背景とした企業ニーズの高まりを見据え、3ヵ年計画を前倒しで実行して、DX支援を積極的に推し進めています。

ここまで見てきたように、DXの実現には変革に向けたビジョンとそれらを支える技術、そして戦略を実行するデジタル人材が不可欠となっています。メンバーズでは、これまでEMC事業を通じて、顧客企業と一体となったチーム運営を大切にしてきました。わたしたちは、DXの成功に「裁量権があるチーム」が欠かせないと考えており、これまでEMCで培ったノウハウが大きく活きていくと考えています。

あたかも「顧客企業の一員」として企業内の多様な課題解決を図ってきたメンバーズは、まさに人を通じてデジタル変革を力強く推進する、最適なDXのパートナーだと考えています。

メンバーズでは一緒にミッションを実現する仲間を募集しています。